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最高裁判所第二小法廷 昭和57年(オ)1356号 判決

上告人

中井豊勝

上告人

中井友一

右両名訴訟代理人

黒田耕一

被上告人

有限会社丸友モータース

右代表者

堀口國男

右訴訟代理人

白石喜徳

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人黒田耕一の上告理由について

一本件記録によれば、上告人らの本訴請求は、昭和四五年一一月一〇日及び同年一二月一五日開催の被上告会社の臨時社員総会における第一審判決付別紙(以下「別紙」という。)記載の各決議が存在しないことの確認を求めるものであるところ、原審は、昭和四五年一二月一五日被上告会社の臨時社員総会が開催されたことはないとの事実を確定しながらも、昭和四五年一一月一〇日の被上告会社の社員総会において別紙1、2、3の(1)ないし(4)記載の各決議がされ、その旨が便宜上同年一二月一五日の日付を付した社員総会議事録に記載されたものであることを確定したうえ、右決議と右社員総会議事録は、別個の決議あるいはその外観ではなく、一体となつたものとみるのが相当であるとし、上告人らの主張する昭和四五年一一月一〇日及び同年一二月一五日付の各決議を通じ、別紙1、2、3の(1)、(4)記載の各決議の不存在確認を求める請求部分については理由がないとし、上告人らの請求部分を棄却した。

所論は、まず、昭和四五年一一月一〇日に被上告会社の社員総会が開催され、右総会において前記のような各決議がされたとする原審の右認定判断には事実誤認、判断遺脱の違法があるというが、原審の右認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができないものではなく、その過程に所論の違法があるとはいえない。右論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

所論は、次に、昭和四五年一二月一五日に被上告会社の臨時社員総会が開催されたことはないとの事実を確定しながらも、右社員総会における別紙1、2、3の(1)、(4)記載の各決議の不存在の確認を求める上告人らの前記請求部分を棄却した原判決には法令の解釈適用の誤り等の違法がある、というのである。よつて、検討するに、上告人らの本訴請求の趣旨は、「昭和四五年一一月一〇日及び同年一二月一五日開催の被上告会社の臨時社員総会における別紙記載の各決議は存在しないことの確認を求める。」というのであつて、形式上過去の社員総会決議の不存在の確認を求めうるものとなつているが、本訴の目的とするところは、被上告会社の社員総会決議の不存在という単なる過去の事実関係の存否の確認を求めるものではなく、被上告会社において昭和四五年一一月一〇日及び同年一二月一五日別紙記載の内容の社員総会決議が何ら行われなかつたのにかかわらず、その旨の決議があつた旨社員総会議事録及び商業登記簿等に記載され、そのことにより外見上あたかもこれが適法に被上告会社その他の関係人を拘束するかのように取り扱われるおそれがあるから、それが法的に何らの効力も有しないことを判決により明確にし、もつて被上告会社その他の関係人間において、右社員総会決議の拘束力のないことを画一的に確定することを求めるものであると解されるところ、原審の適法に確定したところによれば、昭和四五年一二月一五日に被上告会社の臨時社員総会が開催されなかつたが、別紙1、2、3の(1)、(4)記載の各決議は昭和四五年一一月一〇日の被上告会社の社員総会において有効に決議されたものであり、被上告会社の社員総会議事録及びその内容にその商業登記の日付は誤つて記載されたにすぎないというのであるから、右議事録及び登記の記載には、事実関係にそわない点があるとはいえ、なお、それは、昭和四五年一一月一〇日の被上告会社の社員総会においてされた別紙一、2、3の(1)、(4)記載の各決議を表象するものとして有効なものと解しうるのであつて、昭和四五年一二月一五日に被上告会社の臨時社員総会が開催されなかつたことは右決議の効力を否定するに足りず、また、このことがその後の法律関係に何らの影響を及ぼすものでないと解するのが相当であるから、原審が昭和四五年一二月一五日開催の被上告会社の社員総会において別紙1、2、3の(1)、(4)記載の各決議が存在しないことの確認を求める上告人らの請求部分を排斥したとしても、これをもつて原判決に所論のような違法があるとするのはあたらない。原判決の説示するところによれば、原審も右と同様の見解に立つて前記のような判断をしたものと解することができないものではないから、原審の右判断に所論の違法があるとはいえず、この点に関する論旨は、結局理由がないとして排斥を免れないというべきである。

二次に、本件記録によると、上告人らは、本訴において、被上告会社の社員総会における別紙3の(2)、(3)記載の定款変更の決議、すなわち定款六条の氏名、住所及び出資口数並びに同七条の取締役及び監査役に関する定款変更の決議の不存在の確認を求めるものであるところ、原審は、有限会社の社員の氏名、住所、持分の口数の変動は定款そのものの変更ではなく、また、定款に設立当初の取締役、監査役を定めた場合であつても、その解任、選任は定款の変更を要せず、社員総会の普通決議をもつて足りると解するのが相当であり、右各事項の定款変更決議には法的に格別の意味があるわけではないから、社員総会における社員の持分譲渡承認決議及び取締役、監査役の選任決議の存否の確認を求めているときに、重ねて右各事項に関連する定款変更決議の不存在確認を求める利益がないとし、右決議の不存在の確認を求める請求部分の訴えを不適法として却下した。

所論は、上告人らの右定款変更決議不存在の確認を求める請求部分の訴えを不適法として却下した原判決には法令の解釈適用の誤り、理由不備、判断遺脱等の違法がある、というのである。よつて、案ずるに、本件記録によれば、上告人らの本訴における前記請求部分は、被上告会社においては社員総会が開催されたことも定款変更決議が行われたこともないのにかかわらず、定款変更決議が行われた旨総合議事録に記載され、それが外見上会社その他の関係人に対し適法に拘束力を持つかのように取り扱われ勝ちであるから、これが失当であることを判決により明確に確定するよう求めるものであると解されるところ、その定款変更決議がその決議の内容となつている事項の変更そのものについて格別の法的効力を有しないものであつても、定款変更そのものの決議に疑義が存するときは、その決議を推測させる記載のある定款が存在することにより右決議の効力ないしそれから派生する法律関係について種々の紛争が生ずるおそれがあり、かかる紛争を抜本的に解決するためには、その基本となる定款変更決議自体の存否を確定することが必要であり、かつ、適切な手段というべきであるから、被上告会社の定款変更決議の不存在の確認を求める請求部分の訴えは、適法なものとして許容されるものと解するのが相当である。そうすると、これと異なる前記のような見解のもとに、上告人らの前記請求部分にかかる訴えを不適法として却下した原判決には訴えの利益に関する法令の解釈適用を誤つた違法があるものというべきである。しかしながら、本件について更に検討するに、原審の適法に確定した事実関係によれば、昭和四五年一一月一〇日に開催された被上告会社の社員総会において別紙3の(2)、(3)記載の定款変更決議が有効になされたものであることは前記のとおりであるから、上告人らの右定款変更決議の不存在の確認を求める請求部分は、理由がないとして棄却を免れないことになるが、その結論は、原判決の結論よりも上告人らにとつて不利益であるところ、民訴法三九六条、三八五条によると、上告人らのみの上告にかかる本件において、原判決より上告人らに不利益な結論となる判決をすることは許されないから、原判決の結論を維持するほかなく、したがつて、原判決の前示の違法は、判決の結論に影響を及ぼさないということに帰する。それゆえ、この点に関する論旨も、結局、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(鹽野宜慶 木下忠良 宮﨑梧一 大橋進 牧圭次)

上告代理人黒田耕一の上告理由

原判決は、判決に影響を及ぼすこと明らかな事実の誤認があり更に判決に影響を及ぼすことが明らかな重要な事項について判断を遺脱した違法がある。

一、本件の事案は、中井豊勝、同友一が昭和四三年一二月四日から経営する愛媛県自動車認証工場、時価約五、〇〇〇万円の什器備品、借地権を有する有限会社友モータースを、堀口国男が中井父子の法律の不知に乗じ右有限会社友モータースの経営を侵奪したのがその真相である。

二、甲第四号証有限会社友モータースの登記謄本を見ると、昭和四五年一二月一五日堀口国男、西山勝が右会社の取締役に就任し、そして又、右同日代表取締役として堀口国男が就任している。

一審判決では、被上告人は、昭和四五年一二月一五日の臨時社員総会、同取締役会、昭和四五年一一月一〇日の前同様社員総会、取締役会が開催されたと主張し、一審判決は右社員総会、取締役会が開催されていないと認定している。

従つて、又告社員総会、取締役会の決議が存在しなかつたことを確認している。

(一) 被上告人は、本件日時に開催されたと主張する証拠として、西山勝作成にかかる乙第一号証の四乃至同六の日記の記載があるが、右日記の記載形式、筆跡の色、その間隔等昭和五〇年一月一七日付右西山勝の証言調書の上告人両名代理人の指摘の通りであり、その記載は極めて信憑性に薄いものと言わなければならない。

田中等の昭和五〇年三月七日付証言調書を見ても、

昭和四五年一一月頃紅葉狩を行つたことがあるが、これは会社の従業員だけの集まりであり、堀口国男、西山勝等の会つた事実は無く、右堀口、西山に会つたのは昭和四六年の花見であつたと明確に証言されていることからも、被上告人が主張する昭和四五年一一月一〇日ないし同月一一日に臨時社員総会、取締役会が開催された事実が無いことは明らかである。

(二) 右西山日記の記載を見ると、

中井父子が全面的に旧友モータースの経営を無条件に堀口にまかす。

すべての権利を放棄し、現在の債務を含めて全部堀口が買取つたことにする。

一〇月末現在の収支締め切りをせかせて早急に提出する。

出資の所有分担一〇〇口は堀口国男が実権を握り配分する。

という趣旨の記載が存在する。

前示記載から見ると、友モータースの営業権、その内容をなす資産、負債の状況の調査は未だ出来ていない段階であり、営業譲渡等の契約書なども作成されていない。

どの様な資産が有り、どの様な負債が有るのか、そのことを考慮に入れずして直ちに会社の経営を無条件で一切引受けるというが如きことは到底社会通念上理解することが出来ず、右記載の実体からみても、右西山日記は到底信用出来るものではない。

(三) 又、右記載と登記簿添付の甲第二号証の社員総会議事録の、

第一号 社員の退社、新社員の入社

の記載が、乙第一号証ノ五の記載をみても右議事の対象として記載されておらず、又

第二号 役員変更の件

についても同様この様な手続を行つたという経過が記載されておらず、

第三号 商号変更の件

第四号 定款変更の件

についても、甲第三号証取締役会議事録記載の通りの議事がなされたとの記載も存在しないところである。

従つて、右臨時社員総会、取締役会が開催されたとみることは証拠上困難であると言わざるを得ない。

この点に関する昭和四九年二月一日付佐藤重保の証言調書を見ると、

「甲第二号証に昭和四五年一二月一五日臨時社員総会、取締役会開催とあるが……」

との問に対し、

「登記申請を操作してその日付にした。

その日に開催するようお願いして作成した。

実際に行われたかどうか確かめていない」

と答えている。

右証言からみると、佐藤証人は本件臨時社員総会、取締役会が開催されたということを聞いておらず、その開催を前提として登記手続をもつたものではなく、登記申請日及び登記申請内容の議事について、右昭和四五年一二月一五日臨時社員総会、取締役会を開催し、右登記申請事項に合致するような社員総会、取締役会を開催してくれと要望していることが明白となつている。

(四) そして、前示西山日記の通りの状況で、中井父子が右会に出席しているとすれば、前示佐藤証言に言う、

「原告二名は甲第二号証ないし同第四号証の内容は理解されていなかつた。

銀行の融資を受ける都合上、堀口を役員に入れんといけん、ということを聞いた。

融資を受けるについては、代表者を堀口さんにしなければいけないという話が西山の方からあつた。

議事録の内容について、西山の方から金融の都合があるからこの様に計画して貰いたいということであつた。

社員権の譲渡の件も西山から言つてきて言われた通り書いた。

あとの決議の件も同じである。

社員総会を開いていないのは結果からみると聞かせなかつたものと思うわけです」

と明確に証言している。

右佐藤証人は司法書士であり、上告人両名が甲第二号証の内容は理解していなかつたとの証言は、右両名に議事録の内容等を説明していないことが推測され、又、右佐藤証人が上告人両名に説明しなかつたのは、金融の便宜上登記手続をとるもので如何なる手続をとるかは直接上告人両名に利害関係が及ばない形式的な手続であると理解していたがためであると十二分に思料される。

そして、この様な手続をとり、そして又その手続内容等の総ての事項についての依頼は西山勝がこれを行つていることも右各証言の内容から明らかに認められるところである。

上告人両名は勿論のこと甲第一九号証及び甲第二二号証の佐藤司法書士の記載した各書面からみても、金融の都合上融資を受ける都合からその様な手続を形式的に講じたものであり、その前提である臨時社員総会、取締役会が開催されていなかつたことは十二分に証明し得るものである。

その裏付けとして、甲第九号証愛媛県陸運事務所長の「自動車分解整備事業の証明願について」と題する書面を見ても、有限会社友モータースとして商号の変更等がなされていないことが明確となつている。

又、甲第一号証ノ一乃至同第二三号証「自動車定期点検一二ケ月整備記録表」からみても、有限会社友モータースの名称が使われていることからも明らかである。

(五) 又、野本宗平、村上恭三の出資持分は、終局的には昭和四八年三月三〇日上告人中井豊勝に譲渡されていることは甲第六、同第七、同第一〇号証によつて明確となつており、右野本・村上が前示社員総会に出席していないことは同人等の各証言調書からも明確となつている。

(六) この様に形式的な登記手続に関する証拠証言等々を検討しても、金融の必要上形式的に手続をとり、実際に役員変更、経営権の譲渡が行われたとみるべき証拠は皆無である。

(七) この点、実体的に昭和四五年一一月の段階で、有限会社友モータースの経営権を実質的に堀口国男に無条件で譲渡する必要が真に存在したか否かを検討してみる必要がある。

被上告人は、昭和四五年、昭和四六年三月段階で、八九二万八、七三九円の損失金がある(西山勝の昭和五二年九月三〇日付証言)と主張し、昭和四五年一一月段階では莫大な前示金額の借金を抱えて倒産寸前で、上告人両名に泣きつかれた結果堀口が一切を引きついだものであると説明している。

併し乍ら、たまたま宗方弘演が旧友モータースの経理帳簿の作成をし、その帳簿のコピーを存置し、その商業帳簿に基づいて作成した甲第一一号証、昭和四五年四月一日より昭和四五年九月三〇日「会社残高資産表」を見ると、その様な負債は発生しておらず、短期借入金五一八万三、六八六円の内訳をみても、上告人両名或いは知人等に借受け直ちに返済しなければならないような金員ではなく、従つて会社の内容は会社設立後僅か数年を出ない経営としてはまず普通の経営であつた(宗方弘演の証言調書)。

被上告人が主張するか如き営業譲渡等一切の債権債務を肩代りしなければならない逼迫した状態ではない。

金融面からみれば、甲第一三号証ノ一、同二等からも明らかな通り、既に三〇〇万円の資金面がついており、直ちに資金難に陥るというが如き状況でなないことが明らかである。

被上告人等の主張する金八九二万八、七三七円の損失金は、昭和四五年一〇月約束手形帳簿一切を西山勝が持ち帰り、経理操作をし始めた昭和四六年三月末までの後期に発生した損失金である。

被上告人等は、乙第二二号証の一乃至同九の手形決済などをなしたが故に、この様な損失金が後期に発生したと主張する。

然し、西山勝の証言を見ると、これらは前期の帳簿に記載している決済を後期に行つた旨主張するが、複式簿記の原則を無視した弁解である。

前期の商業帳簿に支払手形の債務が記載されており。

それを後期で弁済した場合には支払勘定が減少し、その代りに現金ないし当座の資産勘定がそれに比例して減少するか、銀行等の融資を受けて決済するのなら借入勘定が増えるのが均衡がとれるものである。

従つて、簿外の借金を支払つたというものでない限り、後期に損失金が多発するはずがない。

経営分析の原則からみても、経理の面で売上げ除外をしているとしか言い様がない(後期において)。

又、西山証言では在庫が無かつたと言つているが、この様なことは引き続ぎの際に明確にしておくべきことで、この様な事務手続をとつていない会社の営業譲渡があり得ないことをこの各証言は論証するものである。

旧友モータースが丸友モータース(被上告人)に商号変更されても、その経営実体は、西山勝が宗方弘演に代つて経営帳簿の記載売上げの管理をしていたのみで、上告人両名が中心となつて会社経営を行つており、その実体は旧友モータース時代と何等変更をきたしていない。

前示莫大な後期の損失金がどこへ流れたか(売上げ除外という疑いを前提とすれば)、又、非常勤役員で経営が逼迫しているとすれば、多額の役員報酬をとつている実情をどの様に理解するのか、被上告人等が本件の如き架空の総会議事録などを作成した理由も前示事情から十分推測御認識戴けるものと思料する。

上告人両名は、丸田企業組合の月二、三〇〇万円の修理という好餌につられ、そして又、日野ディーゼルの特殊な部品を購入する資金を銀行から融資を受けてやると甘言を弄され、その法的無知を利用され、その結果本件の如き事態となつたもので、これ等の実体を十二分に解明して戴ければ、本件の臨時社員総会、取締役会が存在しなかつたという判断をなし得るものと思料する。

三、ところが第一審判決は、一審被告(被控訴人、被上告人)の主張する右第一審判決別紙記載の各決議が昭和四五年一一月一〇日の臨時社員総会において決定したものだと主張するのに、右主張に反し、第一審判決主文3の通り、別約1の社員総会における社員の承認決議があつたことを否定しながら、それと実質的に同一の内容を決議したと考えられる前示別紙3、(2)(社員の氏名、住所および出資口数は次のとおりとする)、同三、(3)(取締役の選任)記載の部分を却下するとしている。

そして、右却下の理由として第一審判決は、

「……社員総会における社員の持分譲渡承認決議などや、取締役、監査役の選任決議の存否の確認を求めている場合に、重ねて右各事項に関連する定款変更決議の不存在確認を求める利益(確認の利益)はないものといわなければならない」(右判決二二丁裏)

と認定している。

併し乍ら、有限会社法第六条は、社員の氏名及び住所、各社員の出資の口数などを定款の必要的記載事項として要求し、そして、社員の持分譲渡は、非社員に譲渡する場合には社員総会の承認を要する(同法第一九条二項)と規定せられている。

右有限会社法第六条が定款の必要的事項を定めるのは、一般第三者に対する公益的必要から特に必要とされる事項を定めているものであり、その変更は定款変更決議に基づき定款の記載は変更されるのであるから、右の如き定款変更決議の不存在を求める確認の利益は存在するものと言わなければならない。

以上、原判決は、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違法が有るといわざるを得ない。

又、第一審判決主文「3、(2)、別紙2、3の(1)、(4)記載の部分を棄却する。」との点も、前示社員総会において役員の選任及び代表取締役の就任等の決議が行われたということを前提としており、右棄却の理由は理論上矛盾するものであり到底納得し難い。

四、ところが、原判決は、主文第一項において、

「原判決主文第1・2項を取消す。」とし、右第一審判決と異なる判断をなしている。

右原判決一一丁表を見ると、

「昭和四五年一一月一〇日一審被告の社員総会において、原判決別紙1と結論において同じ持分譲渡承認決議、同2の役員選任決議及び同3の(1)ないし(4)の定款変更決議がなされ、その旨が便宜上同年一二月一五日の日付を付した社員総会議事録に記載されたものであつて、右決議と議事録は、別個の決議或はその外観ではなく、一体となつたものとみるのが相当である。」

と判断している。

併し乍ら、昭和四五年一二月一五日の日付を記載した社員総会が開催されていないことは、一審被告(被控訴人兼控訴人、被上告人)も認めているところであり、又、前示司法書士佐藤重保証人も登記申請をするに便宜な時日を選んだに過ぎない旨の証言をしているのである。

そして、更に、前示第一審判決別紙の各総会決議事項を登記する目的で単に書類上、昭和四五年一一月一〇日、同年一二月一五日臨時社員総会、取締役会開催の趣旨の文書を作成したに止どまる旨の証言をなしている(甲第一九号証、第一審佐藤重保の証言調書、原審における同人の証言調書参照)。

五、原判決はその主文二において、第一審判決別紙3の(2)、(3)の不存在確認を求める部分につき訴を却下すると判断している。

然し、確認の利益を欠くために却下したのか却下の理由が明確でなく(理由不備)、原審判決は持分譲渡承認決議がある限り、その結果に基づく原判決、第一審判決別紙3の(2)、(3)は確認の利益が無いとの趣旨にも読み取れるところであり、その点原判決は第一審判決より以上に確認の利益が存在し、前示却下という判断が何故なされたのか、いずれにしても原判決には法令の解釈適用の誤り、理由不備、判断の遺脱が存在するものと思料する。

六、第一審判決は、その主文別紙2、3の(1)、(4)の取締役の選任等に関する事項に関し、何時、どこで誰との間にこの様な決議がなされたのか、右各事実を特定するに足る事実の認定が何等されていない。

この点、原判決を見るも同様であり理由不備も甚だしい。

七、以上詳細に論述した通り、原判決は法令の解釈・適用の誤まり、理由不備・判断の遺脱更には審理不尽の違法があり、到底破棄を免れ得ないものである。

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